午前十時の映画祭『マルサの女』4Kデジタルリマスター版 伊丹十三 感想ネタバレです。
マルサの女、観てきました!
ブルージャイアントの時にフライヤー見つけて、絶対観に行くと思ってた作品です。伊丹十三生誕90周年記念で、映画祭初上映です。
マルサの女は1987年公開で、アカデミー賞をほぼ独占しました。
フジテレビのゴールデン洋画劇場で何度かテレビ放送されています。
1988/10/8
1994/7/9
1996/6/15
1998/3/14 伊丹十三追悼企画
2002/2/16
など。
詳しくはブロガーのうたまるさんが運営するデータベースにあります。
現在は、土曜プレミアムとして生き残ってます。フジテレビ以外でも放送していたようです。
子供の頃にうっすら見た記憶があります。家族が録画もしてました。内容はほぼ覚えていなかったので、初見の気持ちで見ました。
監督の伊丹十三が前作のお葬式という作品で税金をがっぽり取られ、そこから税金に興味が湧いて作られました。
そして、伊丹十三の女シリーズの第一弾となりました。
主演は伊丹十三の奥様であり女優の宮本信子さんです。
伊丹十三作品だとあと、スーパーの女を見たことがあります。マルサの女2も見たかもしれませんが覚えていないので、改めて見たいです。
監督と女優が夫婦ってすごくかっこいいです。スクリーンの宮本信子さんは、いい女という言葉が自然と浮かんでくるほどいい女だと思います。作品内でも言われてました(笑)
マルサの女では、日本アカデミー賞の他に、シカゴ国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞しています。
最近では、2022年公開のメタモルフォーゼの縁側で、⽇本映画批評家⼤賞でダイヤモンド⼤賞(淀川⻑治賞)を受賞されています。
原作が漫画で、一コマだけ絵を見たことがありました。映画化されてたんですね。観てみたいです。
主要登場人物
役名 キャスト名
板倉亮子 宮本信子
マルサの女
権藤英樹 山﨑努
ラブホテル経営者のラスボス
権藤太郎 山下大介
権藤の一人息子
杉野光子 岡田茉莉子
権藤の内縁の妻
花村 津川雅彦
亮子の同僚
伊集院 大地康雄
亮子の同僚でジャック・ニコルソン
剣持和江 志水季里子
権藤の愛人だが捨てられたので密告
鳥飼久美 松居一代
権藤の新しい愛人でガサ入れされる
あらすじと結末
港町税務署の調査官、板倉亮子が東京国税局査察部、通称「マルサ」に栄転し、実業家でラブホテルを経営する権藤英樹の脱税を暴く。
ガサ入れ(家宅捜索)で、本棚の後ろに隠した金を見つけられるも、さらに隠してる場所は吐かずにいた権藤。そして亮子にマルサを辞め、俺のところに来ないかと言ったが、亮子は首を振った。
権藤は息子を連れ戻してもらったお礼と、亮子の説得により、亮子が忘れていったハンカチに血文字で金庫の暗証番号を書き、場所を教え、去って行った。
感想
紛うことなき名作です。
36年前の映画なので、古い感じはありました。役者の髪型だったり演技だったり。それでも面白かったですし、泣けました。
PG12指定なので、女性の裸がよく出てきますし、お茶の間シーンもあります。
これを普通に夜の21時に地上波で流していたのがすごいです。
女性陣は体当たりの演技でした。殴られるシーンもあり。
それでありながら、亮子は男だらけの組織の中で、特別女として蔑まれることもなく評価され、信頼されていたのがよかったです。
亮子はシングルマザーで5つのダイちゃんという子供がおり、シュウマイを電話でレンチンさせようとしていました。
あの描写はうっすら覚えている気がします。子供心ながら、印象的だったのでしょう。
宮本さんはあのシーンが大事だと考えていて、伊丹監督が男性社会の中で一生懸命に仕事をしている女性を描きたかったと語っています。
今は当たり前になっていますが、こういったヒロイン像の最初だと思いますと。
トーホーシネマズ日劇が閉館する際のイベントでマルサの女も上映され、宮本さんが亮子の髪型で登壇して、このお話をされていたという記事を見ました。行きたかったです。
亮子が母に子守を任せ、一人で飲みに行っているのもよかったです。息抜き大事。代わりにお母さんが大変ですが、激務なのでたまには。
亮子の同僚のジャック・ニコルソン。
誰だろうと思ったら、シャイニングの人ですね。言われてみれば髪型似てました(笑)
劇場で笑いが起こってました。
シャイニングすごく好きな作品です。面白くて衝撃でした。シャイニングは映像美がすごいです。
俳優の大地康雄さんを見て、懐かしい気持ちになりました。いわゆるハゲではありますが、存在感が抜群でかっこいいです。
ドアに足を挟み入れ、足を叩かれながら、これは工事現場で使われている安全靴なんですよ。チェーンを切れ。と言ったシーンがかっこよかったです。
その前の怖い顔をしている同僚に、笑顔で。と言ったのが面白かったです。
脇役が脇役と言えないほど全員濃い。ソースソースソース!!という感じです。
有名俳優をたくさん使っているというより、どの人も顔もオーラも濃ゆい濃ゆい。こってりです。
一人一人を調べたくなりました。こんな気持ちは初めてです。
冒頭の老人に乳を吸わせていた看護婦は職業忍者で今占い師(渡辺まちこさん)をしていらっしゃるし、宝くじを持ってきた男は最後の大道芸人(ギリヤーク尼ヶ崎さん)と言われている人で、90歳超えてご存命でまだ活躍されているし、濃すぎです。
宝くじの男は、なぜか声を別の人が当ていて、変な声になっていました。
他にも有名な大滝秀治、橋爪功、伊東四朗、佐藤B作など。とにかく濃い。桜金造さんは佐藤二朗に見えて仕方がなかったです。
松居一代さん、気が付かなかったです。騒がしかったけど、お綺麗でした。
子役の山下大介さんの演技も素晴らしかったのですが、調べても本作しか出てきませんでした。残念。
名前は分かりませんが、ヤクザが税務署に乗り込んできた際にニヤニヤしていたサバンナ高橋に似ている人も気になりました。
太郎が権藤にどこに行っているんだ、金はどこで手に入れたんだと問い詰められて、個人の自由だろ!と怒ったり、泣いてしまったり、40年近く経っても親子喧嘩の様子というのは変わらないものだなと思いました。
学校で物々交換の手数料の商売をしていると亮子に語っていましたが、商売人のところが父親に似て微笑ましく。
最初の登場シーンがファミコンでマリオをしているところで、亮子も遊んで大画面でマリオのファミコン時代の操作映像を見ることになり、予想外でした。
マリオ上映中ですし、タイムリーですね。
太郎がプレイボーイの服を着ていて、懐かしい気持ちになりました。
権藤があいつ(太郎)に財産を残せるのなら、命がなくなっても良いと言うところが親心でジーンとしました。
ラストシーンで、父親としてお金を残すことよりも、逞しさそのものを見せ、その姿を残した方がいいと亮子に諭されたところは泣けてしまいました。
その通りだなと。稼いでいてもいなくても、お金のために荒んでいる親の姿を見るより、逞しく生きている姿を見たいよなと。
あれだけ頑張っているマルサの月給が32万しかないのが驚きで。それでありながら4日間家に帰っていなかったりする激務で、熱い人たちだなと思いました。
今は働き方改革などで、基本は残業はしないようにということになっていますよね。実態はさておき。それは健康のためにも、家族のためにも大切なことだと思うのですが、仕事に対してあそこまでの熱意で取り組んでいるのが羨ましくもあり、かっこよく見えました。
宮本さんもですが、山﨑努さんの演技が凄すぎました。あのびっこを引いている演技、大変だったろうなと。
最初の方で、資金繰りが上手く行って、喜びのダンスをするシーンがあるのですが、映画JOKERを思わせて打ち震えました。
コップの水の話も印象的で。ネット上でそれを見た気がします。
金持ちになるには使わないことだ。上から水がコップに滴り落ちているとする。喉が乾くとあんたはコップの水半分で飲んでしまうだろ?それじゃダメだ。ぎりぎりまで待つんだ。まだダメだよ。満杯になって溢れてきた水を舐めるんだ。
浪費家なので考えてしまいました(笑)ただ、みんながそれをやると経済滞りますからね。私はこれまで通り回す方向で行きます(笑)
ラストで指を切って血文字で暗証番号を渡したのは、権藤なりの愛なのかなと思いました。痛そうでした。本当に切っているように見えました。お金への強い執着にも思えて、それがまたかっこいい。
内縁の妻がいて愛人もいてさらに亮子に惚れるとは。気が多すぎですね。
津川雅彦さんも、あんなにかっこよくて色気がある人だったんだなぁと思いました。
権藤と亮子が二人で眺めていた公園のロケーションがすごく好きで、撮影場所に行きたくなりました。ああいうありそうでないような幻想的な場所が好きです。
調べてみたところ、横浜にある花月園競輪場でした。2009年に閉場し、今は公園になっています。一昨年に開園になったばかりでした。長い年月がかかりましたね。
もうあの上から眺める小さな公園は見れないんだと思うと悲しいです。
俺はああいいう子供の光景を見ると、胸が掻きむしられる気持ちになるという台詞も泣けました。
サントラ
内容は全然覚えていなかったのに、メロディは強烈に頭に残っていました。
大好きな曲です。
作曲家であり、サックス奏者の本多俊之さんが作られました。
最近ブルージャイアントを見て、ジャズが見たいなと思っているのもあり、東京で公演があれば聴きに行きたいです。
ブルージャイアントの主人公もサックス奏者なので、モデルかなと思いましたが、特にモデルはいないようです。
フライヤー
前ももらったのに忘れて吉沢亮に惹かれてもらってしまったキングダム。
スピッツ。
おわりに
ワンシーン、ワンシーン全てが良くて。携帯電話が肩掛けのでっかいので見た目はダサくても、一斉に電話をマルサが取るシーンのかっこよさ。
逆にこのカレンダー、まだ売ってるよなぁと思ったり、自販機みたいなホワイトボードまだあるのかなと思ったり。
貧乏人から取り上げて、もっと悪人がいるだろ!?と怒る老夫婦とか、庶民の気持ちは変わらないと思ったり、伊東四朗が泣き真似やめてすんっとする面白さとか。
亮子がピンク似合うねと布をかけられて本当に似合ってて可愛かったり。
そばかすメイクや寝癖も可愛くて。豹の剥製を見て、可愛い、私と同じね(そばかすと豹柄をかけている)と言ったり。
権藤が亮子をいい女と言ったり。一連の流れ全てが伊丹十三の宮本さんへの愛とお惚気に思えて微笑ましくて笑えたり。
最強夫婦の最高の映画でした。
伊丹さんは調べたら壮絶な人生、壮絶な最期で、もっと作品を見たかったと思いました。10作品世に出ています。俳優から監督になったと知って驚きました。
亮子は笑顔もないようなクールで強い女というイメージでしたが、実際は子供に優しいし、ヤクザはちゃんと怖がるし、愛すべきキャラクターでした。
異動の際に、なんだか娘を嫁に出す気持ちだなぁと言われていたのも分かります。あのシーンも好きでした。
公式は、伊丹十三作品をサブスクで配信することはないと宣言していて、円盤、上映、放送のどれかになります。
まだ上映は12日に始まったばかり。25日までです。見たことある方もない方も、ぜひスクリーンでマルサの女を浴びてください。会場ほぼ満席でしたので、チケット購入はお早めに。
昔の映画の予告によると、あまりの面白さに当時の首相、中曽根康弘さんが映画館に駆けつけたとのことでした。
見る予定なかったですが、監督デビュー作のお葬式も見たくなりました。
追記
途中で出てくるデブの柴犬がすごく可愛いです。
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