映画『世界で一番美しい少年 the Most Beautiful Boy in the World』感想ネタバレ ビョルン・アンドレセンのドキュメンタリー in 下高井戸シネマ 公開初日です。
概要・上映期間
スウェーデン制作
監督 クリスティーナ・リンドス、クリスティアン・ペトリ
下高井戸シネマ 4月9日〜15日
スウェーデン公開日 2021年10月15日
日本公開日 2021年12月17日
渋谷、新宿ほか 全国順次公開
下高井戸シネマのアクセス・予約方法
アクセス
京王線、世田谷線 下高井戸駅 徒歩3分
普通のマンションや歯医者のような外観で驚きました。
小さいので上映後のお化粧室が激混みなので、外に出てお店に入るなどした方が早いかもしれません。
周辺に適当なお店もないのですが(汗)
初めて行って周辺の散策はしなかったので、ちゃんと探せばあるかもしれません。
予約方法
予約はできません。開館時に当日上映するすべての作品のチケットを、整理券付きで販売されます。
上映10分前に、整理番号順に呼ばれるので、整理券を返却します。
朝1回目は整理券はありません。
全席、自由席です。
朝一番に行かないと売り切れないか心配でしたが、購入できましたし、好きな席に座れました。
あらすじ
ルキノ・ヴィスコンティ監督『ベニスに死す』で一躍有名となった「世界で一番美しい少年」、ビョルン・アンドレセンの現在と過去に迫ったドキュメンタリー。
1971年公開のベニスに死すから50年、ビョルンの当時の心境を知ることとなる。
本作は5年もかけて撮影され、撮影を持ちかけられてビョルンが承諾するまで、3年かかった。
還暦を過ぎ、白髪で長髪、髭を貯えたビョルンには若い恋人がいた。
借りているマンションの管理がうまく出来ず、恋人と共に掃除をし、管理人に問題がないのだと証明していた。
そんな老人となったビョルンには、輝かしい過去があった。
ビョルンは父親が不在のままスウェーデンで生まれ、父親違いの妹と共に、仲睦まじく育った。
しかし幼い頃、母親が森の中で亡くなり、祖母に育てられる。
音楽がやりたかったビョルンは、祖母に言われるがまま、ある場所へ連れて行かれる。
それがベニスに死すの主人公、タジオを決めるオーディションだった。
何のオーディションなのかも分からないまま、セーターを脱げと言われて困惑するビョルン。
回ってみろ、笑えと言われ、それも従った。
数多くの国を数年間飛び回り、美少年タジオを探していたルキノは、ビョルンの美しさにひと目で心奪われ、タジオに決めた。
孫を有名にしたかった祖母は大喜びだった。タジオも母国を出て海外へ出ることは、良い経験だった。
撮影には家庭教師もつき、勉強もしていた。
端役でベニスに死すに主演した祖母は浮かれていたが、ビョルンは映画が公開されると、地獄を見ることになる。
周囲の人々が自分に媚び、近づいてきて、まるでコウモリのようだったと振り返るビョルン。
カンヌ国際映画祭にも出たことで人々は熱狂した。
美しいと絶賛されるビョルン。しかしルキノは記者会見で「もう16歳で歳をとった。オーディションの頃は完璧だった」と言い、その言葉に記者らが笑う。ビョルンは戸惑うだけだった。
撮影スタッフにナイトクラブに連れて行かれ、おどろおどろしい光景に気分が悪くなってしまい、酒を飲み、忘れようとした。
祖母に言われ、日本へ渡ることとなったビョルン。
日本でも熱烈な歓迎を受けた。
日本語の歌を歌ったり、チョコレートのCMに出たりと、活躍するビョルン。
精神不安定になり、安定剤として薬を与えられることもあったが、何の薬かもわからなかった。
フランスで過ごした際には、見せ物として連れ回されたが、高級な場所へ連れて行かれることはあっても与えられる生活費はわずかで、いつもビョルンにはお金がなかった。
ビョルンは表舞台から姿を消した。
そんな傷ついたビョルンにも新たな家族が出来た。結婚し、娘と息子が生まれた。
愛を知らないビョルンにとって、家族にとって、息子は光だった。
しかしビョルンが泥酔してベッドで眠っていた際、妻の悲鳴で目が覚めると、隣で眠っていた息子が亡くなっていた。原因不明の突然死だった。
それでもビョルンは自分を責め、鬱になり、酒に溺れていく。家庭は壊れ、またビョルンは孤独になった。
パソコンで音楽編集をする、歳をとったビョルン。当時、自分が弾いた力強いピアノを聴き終わると、老いた両手を見つめた。
ビョルンは母はアーティストであり、様々なことに関心があり、ディオールのモデルでもあったんだと語る。
母の死の真相を知るため、役所を訪れ、資料を受け取り、生々しい記録に涙した。
父を知らないかと母の親友に聞くも、聞いていない、忘れなさいと言われてしまった。
昔の写真を娘と共に眺めると、娘は父と離れることにより、いい関係になれたと言った。
弟が亡くなった時の自分の音声があり、母の「突然のことだったの」という音声もあった。
なんて美しいんだと涙して娘を抱きしめるビョルン。
何十年ぶりかに日本に訪れると、帝国ホテルのエレベータのボタンを見て、覚えている、ここで間違いないと言い、自分の歌をカラオケで歌った。
当時の日本での撮影スタッフに会えたことや、日本の漫画の主人公のモデルになったことを喜んだ。
映画『ミッドサマー』の撮影風景。ビョルンは「俳優になりたいと思ったことはない。気がついたらなっていた。」と語る。
海辺を一人歩くビョルンは、心の扉を開くのだと言った。
感想
外国、美少年と検索すれば必ず写真が出てくる伝説の美少年、ビョルン・アンドレセン。彼のドキュメンタリー映画が昨年公開されていると知りました。
もう上映終了していると落ち込んだのですが、都内で唯一、下高井戸で上映されていると知り、駆けつけました。偶然、公開初日でした。
日にちは初日にしてありますが、今は1週間以上経っています。記事を書くのが遅くなってしまいました(汗)
初日にアップして、多くの人に見てもらいたかったのですが(涙)
それと日にちが経っているので、あらすじの内容がところどころ間違っていると思います(汗)
本作を知ったきっかけは、現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出演している、市川染五郎でした。
彼が出演すると、視聴者から「美少年」の声が相次ぎました。
私はファッション雑誌『装苑』の表紙で彼を知り、出演を楽しみにしていました。
実際に放送を見た際に、日本のビョルン・アンドレセンだと思い、この映画に辿り着きました。
私の他にもそう思った人がいましたので、市川染五郎の美しさは、絶世と言っていいと思います。
東洋人でありながら西洋人を思い起こさせるということがすごいです。
それでいて日本人としての美しさをしっかりと持っています。
彼は撮影当時16歳で、ビョルンが『ベニスに死す』を撮影した時は15歳でしたので、ちょうど同じくらいの年頃です。
本作でも語られていましたが、この年頃の少年、少女にしかない一瞬の美しさがあり、それを捉えた作品なのだと思います。鎌倉殿も。
当サイトでも何度か記事にしている、ベルサイユのばらの作者・池田理代子先生が本作に出演していて驚きました。
先生が、人の人生の中の最も美しい一瞬と語っていました。
当時のビョルンのイラストも描いていたのですが、そっくりで美しく、感動しました。
オスカルはビョルンがモデルになっていて、そのことについてビョルンはとても喜んでいました。
世界一美しい少年と、世界中からもてはやされ、消費されて苦しんだ過去がありながら、喜んでくれたことにほっとしました。
まさかアニメ映像まで流れるとは思いませんでした。
オスカルとアンドレが蛍が飛んでいる中で抱きしめ合うシーンでした。
ベルばらだけでなく、多くの少女漫画に影響を与えたとのことでした。
ミッドサマーは話題になっていて、見たいと思いつつ、グロテスクが苦手なので、ずっと見れないままだったのですが、見ておけばよかった!と思いました。何も先入観ないまま見るのと、ビョルンだと思って見るのでは、印象が大きく異なりますからね。
ですがビョルンだと思えば怖さも少し軽減される気がするので、近々見ます。ビョルンだと知らない時に、一部の映像で「なんて美しい老人なんだろう」と思いました。老人になってからも美しいと思わせる魅力。流石です。今は、「世界で一番美しい老人」ですね。
マンションの大家さんに会う時に、きちんとした人に見られるためにか、三つ編みをしていた姿もスマートで素敵でした。
本作ではビョルンの母の死について理由は語られていませんが、調べてみると自害だそうです。誰かに殺されたのかと思ってしまいました。母の通話記録があり、精神的に追い詰められている様子でした。
母を求め、父を求めても得られず、家族を持ってもうまくいかず、愛を得られない。
恋人ができてもうまく愛せず、振られてしまう。
美しいともてはやされながら、人生は順風満帆どころか波瀾万丈なのが、とても悲しかったです。
今どうしているのだろうかと思っていたので、俳優や音楽活動をしているのは嬉しいです。
恋人に豚野郎!と言われていたのですが、結局寄りを戻したのかあのままなのか、よく分かりませんでした。
日本滞在中、恋人をホテルにほったらかしたり、マンションでは部屋の掃除ができなかったり、コンロをつけっぱなし?にしたり、老人の世話なんかしていたくない!と言われても仕方ないかなと思いました(悲)
恋人の年齢は分かりませんが、3、40代くらいに見えました。
若い恋人がいるなら安心と思いましたので、できればうまくいっていて欲しいですね。
息子さんの話は衝撃的でした。確かにあの状況では自分を責めてしまいます。唇が青く、妻と二人でなんとか助けようとしたという話も悲しく。
今生きていたら、32歳くらいかな、どんな声をしていただろうかと声を詰まらせるビョルンは、今でもずっと自分を責め続けているのだと涙してしまいました。
娘と話していて涙ぐんでいるところからしても、うまく愛せなくても、愛情が確かにあるのだと感じました。
もし自分が奥様の立場だったら、責めてしまうだろうとも思うので、また悲しいです。
若い頃のビョルンの映像が見れたのは貴重で、嬉しかったです。明治チョコレートのCMに出演していたんですね。EXCEL(エクセル)というタバコのようなパッケージで、細くてお洒落なチョコレートでした。
木の影から顔を覗かせて、走り去っていくというベタベタの少女漫画の構図で、今、恋が芽生えるというようなナレーションで、これは恋に落ちる!と思いました。
母がほぼビョルンと同世代なので、ビョルンのことを聞いてみましたが、田舎者だから知らないと言われてしまいました(笑)
日本語の歌は「永遠にふたり」です。恋させる気満々ですね。本作で流れて、最初知らないおじさんが歌っていると思ったらビョルンでした。日本語の発音ばっちしです。
音源欲しいと思いましたが、レコードしかないようなので諦めました。ですが本作のDVD買えば歌聞けます。
好評のため、その後また日本に来て「愛するために」という曲もレコーディングしたそうです。
B面の「哀しみの森」が気になります。CD出ないかなぁ。
せっかくなのでBlu-ray出して欲しかったですが、DVDのみのようです。
予約受付中です。6月3日に発売予定です。
何度も涙し、ここ最近の映画の中で、一番観てよかったと思いました。ドキュメンタリーなので、フィクションとは別枠になりますけれど。
池田理代子先生が出てきて話をしたときに最初に泣いてしまいました。
ビョルンの悲しげな表情で、私たちは彼のことをわかっていないようで、わかっていたんだという言葉がありましたが、写真や映像を見ても、影があるので、これはわかると思いました。
オーディションの際、裸になれと言われ、え!?と、拒否反応を示している様子が最も年相応の少年に見えました。
ベニスに死すでは、撮影中のスタッフがほぼ同性愛者のため、噂ではルキノが「誰もタジオを見てはならない」と言っていたらしいとありました。それは作品への拘りなのだろうと思いました。撮影中に何かあっては困ると。
公開後はビョルンを守る様子など一切ありませんからね。公開後のたった5年でこの世を去っているのも何とも言えない気持ちになります。
映画監督として巨匠だということですが、他の作品は見たことがないですし、どれだけすごい人だったのかまだ理解していません。
ベニスに死すは数年前に見ましたが、ビョルンの美しさよりも、ラストシーンで主人公が海辺で亡くなった時の顔色が緑色だったか黒色だったか、グロテスクで、それしか記憶に残っていないです。
ミッドサマーを見た後、もう一度見ようと思います。
本作の中で、日本の春のお祭りの提灯が揺れている様子や、ビョルンが歩く姿をスローモーションで映したり、桜の木を下から映したり、美しく切ない映像に感動しました。
帝国ホテルは帝国ホテルと表記が出ていたので分かりましたが、他はどこか分かりませんでした。
新宿ゴールデン街にも行ったそうです。カラオケのシーンかと思われます。
ゴールデン街といえばシティーハンターですね。おじさんが掃き掃除をしているところが、あ!あそこかも!と思いましたが、勘違いかもしれないので確かめに行きたいです。→目黒かもしれません。桜見に行ったことあります♪
ビョルンの若い頃のピアノの演奏、あんな難しそうな曲を弾けていたことに驚きました。ベニスに死すのためにレッスンを受けていたと調べて知りました。
音楽がやりたいと思っていたビョルンにとって、確かに音楽ではあるけれどやりたいこととは違っていたんだろうなと思います。
歳をとったシワだらけの掌を黙って見つめる姿がなんとも切なく。あの時ビョルンは何を思っていたのだろうかと胸を締め付けます。
パンフレット
濃厚でした。ビョルンのインタビューもあります。
ファン必読です。
おわりに
もう一度映画館で見たかったです。
去年上映されていた時の入場特典のポストカードです。譲っていただきました。
サイン入り。
本作で初めてビョルンがスウェーデン人だと知りました。
顔が美しいと聞くとロシアのイメージがありましたが、ビョルンはスウェーデンの奇跡ですね。
母国から逃げ出し、デンマークへ移ったと言われるビョルンでしたが、こうして50年経ち、スウェーデン制作のドキュメンタリー映画に出演したということを嬉しく思います。
すっごく細いのにプールに飛び込んで泳げるほど元気なようで良かったです。長生きされますように。
追記
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