映画『Shall we ダンス?』1996年 主演 役所広司 感想ネタバレです。
シャルウィダンス?
子供の頃に金曜ロードショーかどこかで放送していて、記憶が僅かにあったので見たくなって見ました。
キャスト一覧
役所広司 主人公
草刈民代 社交ダンス教室の女教師
原日出子 主人公の妻
竹中直人 主人公の同僚で社交ダンス仲間
田口浩正 社交ダンス仲間 太った眼鏡
徳井優 社交ダンス仲間 小柄な関西人
渡辺えり子 社交ダンス仲間 毒舌おばちゃん
草村礼子 社交ダンス教室のお婆ちゃん先生
柄本明 妻が主人公の浮気を疑って雇った探偵
本木雅弘 教師にカップルを申し出て振られる
監督
周防正行
草刈民代の夫。本作がきっかけで結婚。
あらすじと結末
40過ぎの経理で真面目な妻子持ちのサラリーマンが、電車から見えた社交ダンス教室の女教師に見惚れ、社交ダンスを始める。
教師はかつてイギリスのブラックプールでセミファイナルにまで進んだ実力者であったが、思い上がった精神で失敗し、カップルを解消され、帰国してからは父親の命令で嫌々教師をしていた。
サラリーマンは教師を下心で食事に誘うも、邪な気持ちでダンスをするなと一蹴される。
そのことから見返してやりたいと思ったサラリーマンは、ダンスに奮闘し、いつしかダンスを好きになっていた。
ダンス大会に出場することになったサラリーマンは、教師からダンスを教わり、和解。
順調に練習は進み、大会に出場するも、ダンスを隠していた妻子が見に来ていたことに動揺し、失敗。
もうダンスはやらないと塞ぎ込んでいたサラリーマンに、妻は浮気を疑い探偵を雇っていたことを謝罪し、ダンスをまたやるように勧めた。
サラリーマンもまた、妻に寂しい思いをさせたと謝った。
教師がイギリスに行くことになり、手紙で最後のダンスパーティーに誘われたサラリーマンだったが、意固地になり蕎麦屋やパチンコ屋で時間を潰していた。
しかし帰りの電車で通っていたダンス教室の窓に、自分の名前が掲げられ、Shall we ダンス?と張り紙がしてあるのを見たサラリーマンは、ダンス会場へ向かった。
パーティーでは、教師がラストダンスの相手を指名するところだった。駆けつけたサラリーマンを見つけた教師は、「Shall we ダンス?」と声をかけ、サラリーマンはスーツのまま教師とダンスした。
感想
名作でした。観客動員200万人、国内の映画賞総ナメなだけありました。
庭付き一戸建てのローンの返済のため、仕事に出る奥さんが、「ローンができて張りが出来ちゃった」と喜んでいるのが今の時代だと考えられない発想だと思いました。
時代のせいではく、この妻の楽観的なキャラクター設定なのかもしれませんが。
主人公が空気が抜けた風船のようになったのと、真逆の反応ですね。対比なのでしょう。
社交ダンス仲間であり同僚の竹中直人が、「システム情報化のくせしてWindowsも知らない」と陰口叩かれていたのも時代を感じました。
いま、会社勤めでWindows知らない人なんていないと思いますからね。
お家はこじんまりとして可愛らしい家でしたが、実在するのか気になりました。
ストーリーとしては、私から見ると、付き合ってもなく、肉体関係がないにしても不倫なので酷いと思いましたが、
家を買ってローン返済の為に好きでもない地味な仕事を定年まで続けていく役所広司の虚しさも理解出来ますし、妻と和解したシーンは泣けました。
マルサの女の時もちょっと思ったのですが、昔の俳優さんはちょっと棒読み気味な演技の人が多いと思いました。
今の俳優さんたちの演技力が上がったのか、よりナチュラルに寄せていっているのか、時代が異なるからそう感じるだけなのか分かりません。
ただ、棒読みっぽく聞こえても、演技が下手というわけではなく、存在感があるし心に残ります。
歌が技術的に上手ければ好きになったり感動するわけではないのと同じなのかなとも思います。
当時は舞台寄りの演技だったのかなとふと思いました。発音をしっかりすることを意識していたとか。想像です。
もう一つマルサの女といえば、監督の周防さんはマルサの女のメイキングビデオの演出を行っていて、その関係から伊丹十三賞の選考委員を務めているそうです。
もう一人の主人公とも言える教師役の草刈民代さんが奥様だと知り、伊丹十三のように奥様大好きで出演させたのかと思ったのですが、本作がきっかけでご結婚されたようです。
草刈さんの姿勢がとてもお綺麗で、自分の背筋がいつもより気になりました(笑)
イギリス・ブラックプールでの大会のドレス姿がかっこよかったです。
本物のブラックプールのボールルームが出てきます。ヴェルサイユ宮殿のような煌びやかな空間でした。行ってみたいです。
もう30年近く前の作品ですので、ロケ地が殆ど閉鎖してしまっていて残念です。
電車から大きな文字のメッセージが見えたのが、先日レビューを書いたメゾン・ド・ヒミコを思わせました。
どちらも心を動かされるメッセージでした。
渡辺えり子さんの役、すごく良かったです。ヒステリックで毒舌なんだけど根はいい人なだけに、憎めないキャラクターでした。
草村礼子さんが作中で言っていた、1956年の『王様と私』というミュージカル映画が見てみたくなりました。
Shall we dance?の曲が使われており、本作はこの曲からタイトルが取られました。
大貫妙子さんがカバーしていて、サントラに収録されています。
竹中直人のヅラ姿は、子供心に強烈だったようで記憶にありますね。
当時はお洒落で面白い感じの映画という認識でしたが、主人公の不倫願望が織り込まれていながら、何とも奥深い映画だったとは。
ただ眺めるだけ、通うだけなら良かったのですが、食事に誘ってしまったのがアウトでしたね。バッサリ断られてましたが。
家を買ってくれて、専業主婦にさせてくれて、遅くまで寝てていいよと言ってくれて、定時で帰ってきてくれる優しい夫。
それなのに突然、帰りが遅くなり、香水の香りをつけて帰ってくる。探偵雇われても仕方ないですね。当たらずと雖も遠からずでしたしね。
結末を覚えていませんでしたので、最後にイギリスに駆け落ちするんじゃないかってヒヤヒヤしました。
一言、趣味で社交ダンス始めたんだって妻に報告すれば済む話なのに黙って帰りが遅くなって、しかもそれは下心がきっかけで、挙句、逆ギレ。
こんな対応されても、パーティー行きなよと背中を押す妻、良妻賢母過ぎます。
男性が社交ダンスを始めたいと言っても、特に下心があるのね!とは思わないですが、何度もおっさんが社交ダンスなんてスケベ心だと思われるんだという台詞が出てきたり、会社で隠したがっている様子が不思議でした。
時代なんでしょうか。社交ダンスが趣味なんて聞いたら、まぁなんて優雅な趣味!と思いますけどね(笑)
作中でも、レッスン代が高額で主人公が戸惑っている場面がありましたし、衣裳も必要で高級な趣味のイメージがあります。
草村礼子さんが初歩のレッスンを教えてある際にやってみたくなって、見ながらちょっとステップ踏んでみました。
この映画は当時、社交ダンスブームを巻き起こしたそうなのですがよく分かります。いま社交ダンスの教室のドアを叩きたい気分です。
アニメのボールルームへようこそという作品は社交ダンスをテーマにしていて、それも面白く見れたのですが、やはり実写だとまた違って感じます。
大会の時、主人公の娘が、お父さん頑張ってー!!と何度も大声をあげて応援して、気付いた主人公が動揺して失敗するのですが、娘にイラつきました(笑)
集中してるからいま声かけないで!と。
しかも大変なことになったのに、謝りもせずお母さんと一緒に出て行ってしまって、えー!?と思いました。
ですが、父と母を和解させたのはよかったです。子は鎹ですね。
おわりに
草刈民代さんが、一人で教室で微笑みながら舞っている姿が本当に嫋やかで美しくて、見惚れました。
不倫はよくないけれど、結果的にお互いが恋愛関係を抜きにして、人生の恩人になったのが感動的でした。
主人公は生きる喜びを見つけ、教師は自分を見つめ直し、また夢に向かうことができた。
恋愛関係ではない、だけどただの友情と言うには物足りない、特別な男女の関係ってグッと来ます。
現実ではタイタニックのカップル役のレオ様とケイトのような関係性ですね。
あのふたりはお互いに対して一度も恋愛感情を持ったことがないのです。だけど大親友。最高です。
動機やきっかけが何であれ、健康的な趣味で生きがいを見つけられることは素晴らしいことだと思いました。
お金や時間に余裕がないと習い事はなかなか出来ないものですが、区民センターや市民センターで無料のものもありますし、
もしも何も趣味がなく、人生がつまらないという方がいましたら、何か人と関わり、体を動かす趣味を始めてみるといいかもしれませんね。
背筋が伸びる、踊りたくなる映画でした。本木雅弘が木本さんという役で出演していたのがちょっと笑いました。
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