フランス映画『ヴィオレッタ』感想ネタバレ エヴァ・イオネスコの実話
モデル、女優、監督のエヴァ・イオネスコの自伝的映画です。
エヴァは子供の頃、母親からヌード写真を撮られ、売られました。
2012年には母親相手に子供時代を奪われたとして裁判を起こし、勝訴しました。
フランスでは2011年に公開され、日本では2014年にR15指定で公開されました。
キャスト
()内はモデルとなった人物です。
役名/キャスト名
ヴィオレッタ/アナマリア・ヴァルトロメイ
(娘 エヴァ・イオネスコ)
アンナ/イザベル・ユペール
(母 イリナ・イオネスコ)
あらすじ
主人公のヴィオレッタは12歳の少女。芸術家の母を持ち、曾祖母と暮らしている。
母はヴィオレッタの魅力に気付き、写真を撮る。撮影はエスカレートしていき、ヌードにまで至る。
バンドマンのシド・ヴィシャスとの写真で脱げと言われ、不満が爆発したヴィオレッタはもうモデルをやりたくないと抵抗。
そんな中、唯一の味方だった曾祖母がこの世を去った。母と二人きりになってしまったヴィオレッタ。
母は芸術だと言い張るも、児童虐待ではないかと訴えられ、ヴィオレッタを施設に入れる話が持ち上がる。
それに対し、親権を失くさないため、ヴィオレッタの撮影をやめるも、撮り溜めていた写真を売り飛ばしてしまう母。
ヴィオレッタは、母がカウンセリングのために録っていた録音で、母が祖母と曾祖父との娘だと知ってしまう。
ヴィオレッタは学校ではいじめられ、居場所がなく不登校になり、タバコを吸ったり非行に走る。
路上でひったくりをして施設に入ったヴィオレッタは、髪を短く切り、非行少女と生活する。
母が面会に来ると、エヴァは逃げる為に森へ走り出した。
感想
監督のエヴァ・イオネスコや母のイリナ・イオネスコの人生は前にネットで読んでいて知っていたのですが、改めて映像で見るとつらかったです。
曾祖母が弱々しく可哀想で。母の出自も相当重く、可哀想です。頭が混乱しますが、エヴァから見た関係性は下の通りです。
祖父(本来なら曾祖父。イリナの母の父)
↓
祖母(イリナの母であり、姉である。父親にレ×プされ15歳で妊娠し、母(曾祖母)に追い出された)
↓
イリナ(母。近親相かんで出来た子供)
↓
エヴァ(父親不明)
冒頭で自分で追い出したのになぜ写真を飾っているの?とアンナが祖母に言うのですが、それが悲しかったです。
自分の夫と実の娘がそんなことになっては、もう一緒に暮らせないですよね。
それでも、祖母はアンナのことを、娘から託されたんだと言っています。
この事実を知ったヴィオレッタがアンナにアバズレ!と言いますが、アンナは何も悪いことをしていないし、アンナの母も被害者なのに何故、とまた悲しくなりました。
全ての元凶は祖父にあります。それでもアンナがヴィオレッタにやったことは罪深く、それもまた苦しくなります。
撮影当時10歳だったというアナマリア・ヴァルトロメイは本当に美しく、色気も大人顔負けです。
15歳になった彼女をインタビュー記事で見たのですが、落ち着いた美しい女性に成長していました。
少女時代にしか出せない美しさというのは間違いなくあり、映画『レオン』を見ても思います。
少年ではターミネーターやハリー・ポッターなどで思いますね。
ベニスに死すなど。
イリナのエヴァの写真集は、今でもファンがいます。
確かにアーティスティックで雰囲気のある写真だと思いますが、実の母に裁判を起こすほどエヴァが傷付いたのもまた事実なので、二度と同じことがあってはならないと思います。
ヴィオレッタには撮影シーンは登場していませんが、『思春の森』というエヴァが出演した映画の問題作もあります。
これも無理矢理出演させられたのだろうかと怖くなります。
おわりに
母に自分の思いが全く伝わらず、獣のように叫び声を上げるヴィオレッタの姿が痛ましくて。
シド・ヴィシャスがロリコンだったとは知りませんでした。
芸術という名に隠れた、ただの人間の欲望。
母に写真を撮らせてまで遊びに行きたかった友達の家に行ったら、その母親にあなた有名人よね、と自分のヌード写真が載った雑誌を渡されるヴィオレッタの悲しさ。
12歳の子供には重すぎました。
子供が性的搾取を受ける映画では他に邦画の『闇の子供たち』を見たことがあるのですが、あれも酷かったです。
この映画を監督することによって、少しでもエヴァさんの気持ちが晴れたならと願います。
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